NAB就業教育研究所

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所長'sファインダー

「飯を食える大人」を育て、支えることに拘る、
赤坂にあるNAB就業教育研究所所長、佐々木直人のあれこれブログ。

プロフィール

佐々木直人

1973年生。
1998年三菱商事株式会社入社。ベンチャー企業の起ち上げから中央官庁まで、国・業界を問わず様々な新規事業を担当。中途採用のスキームを提案し面接官として合否判定や育成施策の企画にも携わる。 情報戦略統括部、経営企画部を経て独立し、2011年NAB就業教育研究所を設立。 学生や若手社会人のスキル向上、キャリア形成に正面から向き合い続けている。

大学生のうちにやるべきこと その3

カテゴリー:これからの働き方



 大学生って、社会のなかではどんな存在なんでしょう。考えたこと、ありますか?

 社会を回している“大人たち”に保護されている“子供たち”の一番上位にいて、“大人たち”が理解できない新しいものを産み出して世の中を変えていく可能性すら秘めている。いつかその可能性を爆発させ、世の中が今より少しでも良くなるように回していく “大人たち”になってくれる人達。

 但し、その力を十二分に発揮するためには、ただスマホを流れるニュースを目で追うだけじゃなく、実際に「社会」に触れてみる必要がある。自分で触れると「これ、おかしいんじゃないの?」と初めて気づく出来事がたくさんある。変えていった方がいいのではと考え始める。ところが、変えようとすると “大人たち”に何もわかってないなといったしたり顔をされ、結局反対される。

 その時言いくるめられないよう、自分たちが「こうあるべきだ」と考える社会のありようを描いておく必要がある。先に社会に出て、実際に様々な問題にぶつかっている“大人たち”と経験や知識で勝負しても勝ち目は薄い。だったら、大学生ならではの強みをフルに活かす方が勝機はある。

 それこそ、社会を変えていく経験を100年早く済ませた先人が悩み考え抜くプロセスを記した書物を読むことです。その一つ一つについて深く考察することで、社会問題の本質が何かを見極め、多くの先人の挑戦から気づきを得て、自分たちの経験に置き換えて応用しようと努めてきたのでしょう。

 戦後、1億総活躍で所得を倍増させ、上下水道や団地、高速道路、新幹線を整備し衣食住に不安のない社会がほぼ出来上がると、人々の眼先はより細かくデリケートな方向に向かいました。その結果、学生が触れられる「社会」はずいぶん仮想的になりました。買い物は誰とも一言も口を利かずにできるようになり、アルバイトではマニュアル化が進み、企業では学生が気軽にオフィスに入ることもままならなくなりました。インターンも学生が怪我せず満足してもらえるよう、お客様扱いするものが少なくありません。

 「社会」のリアルな部分に触れてみたいと思っても、なかなか難しい世の中になってしまった。リアルな衝撃を受けてものごとを大きく捉えたり、それを語れる場が消えてしまった。

 ところが働き始めると、いきなり剥き出しになった社会に放り込まれるから、ミスマッチは起きるしショックも大きい。「社会」に対するイメージが曖昧なままだから、キャリアのイメージもぼんやりとしか描けない。だから内定を取ってもモヤモヤが残ったまま。そのモヤモヤが入社3年目ぐらいに頭をもたげるとポロっと辞めてしまう。歯を食いしばってやり過ごしたとしても、30歳ぐらいを前にしてもう一度、足元がグラつく不安に襲われる。
 
 「社会」って何なのか、普通は知らず知らずに(社会経験などと言って)社会に触れ自分なりのイメージを重ね膨らませていくものなのですが、それをさせてもらえないままつじつま合わせだけが、いきなりやってくる。適応不全を起こさないためにも、「社会」とはどういうものか、自分はどんな風に関わっていくのかを具体的に考えておくことが非常に重要です。

 変化の幅が激しくなる一方の時代(ボラティリティが高い、と言います)を生きるうえで不安を全て解消することや、いつまでも「安定した」仕事や企業なんてありえません。不安を少しでも抑えたければ、自分なりの「社会」に対する手触りや距離感を掴んで、怪我をしない転び方なんかも試しておく必要があります。

 それらを磨き抜く豊かな時間が、皆さんだけが持つ、4年間なんでしょうね。