人の役に立ちたがる人が、人の役に立てない話
カテゴリー:これからの働き方
「わたし、人の役に立ちたいんです」。毎年、学生から聴くセリフです。気持ちはもちろん分かりますし、私もキャリアの仕事も商社経営者の仕事もリユース事業の経営者の仕事でも、その思いを忘れたことはありません。
ただ残念ながら、企業や仕事を選ぶ最大の理由として、最前面に打ち出すようなものではありません。“プロ”を目指すなら、その大前提として当然大事にすべき意識ではありますが。
最近「人に感動を与えたい」とか「人の役に立ちたい」って前面に押し出す人、増えてきましたね。僕は前職で任された大型プロジェクトでも、今進めている、独立した様々なメンバーと小さなプロジェクトを回す時でも、そういう人とは一緒に仕事をしません。
なぜでしょう?
とにかく人の役に立ちたがる人って、仕事の成果に対する自分の判断基準がないんですよ。“相手が喜ぶかどうか”ですべて決まってしまう。そうなると、自分としては今日の成果物はちょっと不出来だなと感じたとしても「まぁ、相手が喜んでいるから、とりあえずいいか」と判断してしまいます。
こうした相手に拠って成果のレベルがコロコロ変わる人は、仕事を頼む側からすると怖いですよ。際限なく低レベルの成果を出すことに躊躇しない。「だって、お客さんが喜んでくれているじゃないですか」と言い放ちながら。
逆に言えば、「自分の出す成果の品質は、何があってもこのレベルに届くよう担保したいと思って取り組んでいます」と“自ら決めて”いる人とは、本当に仕事がしやすいです。
自分が何をどこまでやるのか、どの程度の成果をいつごろまでに出すのかを共有できるので、一緒に仕事を進める中で出てくる成果のレベルと作業の進捗が想定しやすいからです。
とにかく人の役に立ちたがる人と、成果のレベルを自分で決めている人とが同じ場にいて、一緒に何かをやろうとするとどうなると思います?
ほぼすべての仕事を、成果のレベルを自分で決める人が片付けてしまうんです。人の役に立ちたがる人は「何かあったら言ってくださいね、手伝いますから」って周囲に声をかけて以降、ほぼ何もしない、という状況がごく自然と起こるんです。
本当に人の役に立ちたいという強い思いがあるなら、あなたが「誰に」「何を」「どのように」することで、「その人がどう幸せになる」のかを責任もって具体的に定義してみましょう。
簡単ではないでしょう。何度も何度も考え直すことになるでしょう。でも、自分で手に入れた答えは、きっと20代のキャリアを豊かにしてくれますよ。