NAB就業教育研究所

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所長'sファインダー

「飯を食える大人」を育て、支えることに拘る、
赤坂にあるNAB就業教育研究所所長、佐々木直人のあれこれブログ。

プロフィール

佐々木直人

1973年生。
1998年三菱商事株式会社入社。ベンチャー企業の起ち上げから中央官庁まで、国・業界を問わず様々な新規事業を担当。中途採用のスキームを提案し面接官として合否判定や育成施策の企画にも携わる。 情報戦略統括部、経営企画部を経て独立し、2011年NAB就業教育研究所を設立。 学生や若手社会人のスキル向上、キャリア形成に正面から向き合い続けている。

リーダーと役職の違い

カテゴリー:これからの働き方



「将来、人に影響を与えられるリーダーになりたい」という話を学生からよく聞く。

どこか引っかかる。違和感を感じる。

「感動を与えたい!」という、プロスポーツ選手のアレと似ている。百歩譲ったとして、彼らはそれが職務の一部でもあるのだとしても、個人的にはあまりよい表現では無いように思う。

しかし、上述した学生の表情は真剣そのものだ。そこに傲慢さや不遜さは全く見られない。

もしかして、リーダーと役職の違いを知らないのではないかと思った。リーダーも役職も、それさえあれば就活が有利に運ぶアイテムみたいなものだと思い込んでいやしないか。あの、グループディスカッションで「取り纏め役」になることそのものに執着するように。(余談ですが、それは採用する側が見ていることのほんの一要素です)

リーダーとは何だろう。ドラッガーはシンプルに「リーダーに関する唯一の定義は、つき従う者がいるということである」と定義した。ここでいうつき従う者は、自らの意志でついていく人達であって、独裁政権下の人民やブラック企業でイヤイヤ働く人等は含まれない。

一方役職とは、ある組織の中で一定の権限と責任を規定された業務執行・組織運営上の役割のことである。部長は部と言う組織単位の範囲において、ある業務を時には専横的に執行する権限をもつ。役職は上位者が任命するケースが一般的で、ここがリーダーとは大きく異なるところだ。

リーダーは結果的に皆が影響を受け、この人についていきたいと思う、つまり「支えてくれる人達に認めて貰って初めて成立する」のであって、一部の上位層が任命した部長やらサークル長のように、「この人が長だから、皆が言うことを渋々であろうと聞く」のとはベクトルが真逆だ。「部長にはなれても、リーダーにはなれていない」なんてことは珍しくない。

私もこれまで数多くのプロジェクトに参加してきたが、役職としての「プロジェクト・リーダー」は必ずいた。もちろん、率いるに足る素晴らしい人材も、無理やりやらされイヤイヤ取り組んでいる人もいた。しかしどんなプロジェクトであっても、役職とは関係なく皆がついてくる、迷ったらその人に訊く、良くない徴候を発見したらまず第一にその人に情報が集まる、そうした“影のプロジェクト・リーダー”というのが存在した。

もちろん、プロジェクトのメンバー全員が知っている。決して表立って褒めたりはしないが、プロジェクトが無事にローンチした後、セクションごとや小さなチーム単位で開かれる細やかな慰労会に引っ張りだこになっている。

そうしたリーダーの下では、人が育つ。どうすればプロジェクトが上手くいくかを知っているから、少しでも戦力のかさ上げをすべく、育成にも手を抜かない。人を守る。だから脱落者が極端に少ない。次も一緒に仕事をしたいと思う現場のメンバーも多い。一度一緒に仕事をしたメンバーは、プロジェクトをうまく進めるために実践したルールやノウハウが共有されているので、次に一緒に組んだ時に立ち上がりがスムーズになる。

こうして、リーダーはプロジェクトの成功確度を着実に上げ、より大きく難易度の高い案件をマネジしていくようになる。そしてそれを、役員たちはしっかりとみている。彼らにしてみれば、だれが一番自分の理想を高い確度で実現してくれる人材か、その見極めができなければ、自分の立場が危ういから尚更だ。

素敵なリーダーが増えてくれれば、まだまだ日本の未来は明るい。