NAB就業教育研究所

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所長'sファインダー

「飯を食える大人」を育て、支えることに拘る、
赤坂にあるNAB就業教育研究所所長、佐々木直人のあれこれブログ。

プロフィール

佐々木直人

1973年生。
1998年三菱商事株式会社入社。ベンチャー企業の起ち上げから中央官庁まで、国・業界を問わず様々な新規事業を担当。中途採用のスキームを提案し面接官として合否判定や育成施策の企画にも携わる。 情報戦略統括部、経営企画部を経て独立し、2011年NAB就業教育研究所を設立。 学生や若手社会人のスキル向上、キャリア形成に正面から向き合い続けている。

豊かな働き方がしたければ

カテゴリー:これからの働き方



キャリア支援のシーズンが本格化して2ヶ月。学生からの相談もいよいよ増えてきた。

相談内容やグループワークの指導をするにつけ、ふと、学生が共通の課題を抱えていることが分かった。

それは、働くうえでの「相手の顔」が見えていないことだ。

自分が「働く」ことによって、具体的に「誰が」「どんな影響を」「どのくらいの期間にわたり」受けるのか。

社会人であれば無意識に考えているし、「飯を食える大人」であればその想像範囲はかなり広い。

自分の仕事によって影響を受ける相手にとって、よりよい影響を多くもたらすには何ができるのか。そのためには、自分の仕事の前段階を担っている人にどうあってほしいか、もちろん彼らにとっても何か役に立てることはないか。

仕事の全体像を大きく俯瞰しながら、個別最適と全体最適をバランスよく見極めていく。だからより活躍を求められ任されることが多くなり、仕事の幅や深さも広がっていく。「できる大人」ってやつだ。

秋冬のインターンもいいけれど、大前提としてまずは「自分」が「誰に」「何を」もたらそうとしているのかはじっくり考えておいた方がいい。

もう少し踏み込んで言うなら、相手の顔が見えていて、どんな貢献をすべきかをきちんと考えている人は、仕事をし始めてからの成長も早いだけでなく、前向きに仕事に取り組むモチベーションが高い。淡々と事務的にこなせばよい仕事でも、相手としっかり向き合い自分の使命を持っていれば、「やらなくても責められはしないが、やれば関係者が救われるような仕事」を躊躇なくやれる人になる。

ピンと来ないかもしれない。

そこで、友人の医師のエピソードを掲載しようと思う。ご本人に快く引用の許可を頂いた。 


昨日は当直中にコウノドリを観ていたら、自分が看取った赤ちゃんのことを思い出した。
昨日当直した病院でずっと前に勤務していたころ、亡くなった赤ちゃんがいた。コウノドリとはシチュエーションが違うけど。
カルテの記録を見ながら、この頃の私は睡眠時間毎日3時間で過労死すると思ってて、死んだら過労死認定されやすいように毎日の業務の記録をつけていたくらいだったのに、まあまあ頑張ってんなと思ったりして(笑)
その子(のご両親)には解剖を勧めた。
もし、何か病気が見つかれば、次回妊娠時の対策にも役立つ可能性があるし、何より、赤ちゃんのことを医学的な観点からもちゃんと見つめてあげる方法だと説明した。
「これまでご夫婦を希望で支えてくれたように、これからの辛い時間を一番支えてくれるのは、間違いなくこの子本人だから」と言ったらご夫婦が望んだ。いいこといってんな私(笑)
この子の手形と足形を載せた、カードを戴いた。男の子だった。名前も一緒に考えた。一晩同室して退院するときに、辛かっただろうに精一杯の笑顔をみせてくれた。
それから10年もして、別の病院に勤務しているときにそのご夫婦から手紙が来た。
「○○ちゃんに、弟ができました」「あのときは、ありがとうございました」
あんまり嬉しくて、そのハガキはずっと大事に取ってある。医者になると、自分の未熟さからいろんな迷惑をかけることもあるし、私のことが嫌いな患者さんもいっぱいいた。私がお医者さんになったことは、少なくともこのご夫婦にとっては意味のあることだったのだと思えた大事なハガキである。


務めた仕事の結果は、いつ、誰に、どんな形で価値が産まれるのか分からないことすら少なくない。カッコの中に正しい答えを書けば即座に丸が貰えて単位が下りるのとは、根本的に構造が違う。

だからこそ、自分が折れずに気持ちよく長く働けるようにするためにも、「誰に」「何を」もたらすつもりで働くのか、仮説を作り常に磨いて行く必要がある。 

その方が多分、あなたは気持ちよく働けるはずだ。